台湾滞在制作成果発表展「溫故知新」
滞在制作成果発表展
「溫故知新(故きを温ねて新しきを知る)
Learning from the Past to Create the Future」
■会期 2024年10月12日(土)~10月27日(日)
■会場 Sanho Art Labs
2022 年にAbsolute space for the Arts と北海道の美術作家・キュレーターと共に実現したオンラインコラボレーション展示の中で、私は台南市のランド
マーク的な建築や風景の写真と自身が住む札幌市、2つの都市を建築物で繋げることをテーマとした「City946」という作品を制作しました。日本統治時代の建築が多くランドマークとなっている台南に感動すると同時に、台湾という国がなぜこれほど多様な歴史を受け入れてきたのかという疑問が生じました。そこで、今回の滞在では歴史を学び、実際に様々な場所を訪れることを目的としました。
実際に台南の街を歩きながら撮影しているうちに、その疑問の答えに近づけたように感じました。台南は台湾で最も早く開けた地区の一つで、日本統治以前の古い建築が至るところに残っています。それらは保存され、あるいはリノベーションされ、日常の中で歴史が息づいていることを五感で感じ取ることができました。また、さまざまな神を祀る寺院の多さにも驚かされ、信仰と祈りが生活に深く根付いていることを実感しました。西洋、中国、日本といった異なる国々の影響を受け、多くの移民や先住民族の存在を背景に、多様な文化や価値観を内包する街であることがわかりました。
私は、150 年ほどの歴史である近代都市・札幌で育ち、これほどまでに歴史ある地域に長く滞在するのは初めての経験でした。気候や文化が全く異なる台南は、私にとってまさに「故きを温ねて新しきを知る街」という印象でした。現在、日本各地で古い街並みや建物を取り壊して再開発が進んでいます。日本の気候や耐震基準の変更といった理由から古い建物を残すのが難しい場合もありますが、消えゆく街並みには寂しさを感じます。
人類の経済活動や核実験により自然環境が大きく変化し、人新世(じんしんせい)Anthropocene という時代に突入した今、エネルギーを大量に消費する「スクラップアンドビルド」ではなく、歴史を尊重しつつ新たな価値を創造する「温故知新」の姿勢こそが、未来の都市の理想像ではないでしょうか。
私は自然とテクノロジーが共生する社会を描くSFジャンル「ソーラーパンク」の要素と、台南の街の風景を融合させ、「City 22」という作品を2 点制作しま
した。自然と共存する生活を理想とする未来像と、エネルギッシュな人々の活動が織り成す美しい日常を表現し、台南の街の多様性を取り込んでいます。ま
た、台南の緯度「22」を作品タイトルに使用し、以前制作した「City 946」との関連性を示しています。
北国から私を召喚し、この素晴らしい機会を与えてくださったAbsolute space for the Arts の皆さまに、心から感謝いたします。
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